P3P 女主人公vs低周波パット

Last-modified: 2020-11-08 (日) 03:52:54
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「これをお腹につけてっと……。さていきますか」

 時は影時間、普通の人間は認知できない一日と一日の狭間にある時間。その時間の間だけあらわれる迷宮、タルタロスのロビーにて一人の少女が探索の準備をしていた。普段の探索と違うのは仲間を連れず、彼女一人で来ていることと彼女がなにやら怪しげなベルトのようなものを身に着けていることか。こうなった原因は3日ほど前に遡る。
 体重計、それは年頃の乙女にとってはもっとも恐ろしい怪物。しかし、それに挑まなければ他人に指摘されるという最悪の事態になるまで自身の現状に気が付くことはできない。今、ここにそんな気持ちを胸に試練へとあしを踏み入れる者がいた。

「う、嘘……」

 表示された数値は一か月前の彼女からすればありえない数字であり、それは彼女を絶望に陥れると同時にある決意を抱かせた。痩せようと。確かに彼女、主人公子は最近自身の部活動であるテニス部へと顔を出していないのもあり、多少体重が増えている覚悟はしていた。しかし、目の前の数字はあまりにも大きすぎたのだ。よく考えたら、さすがにこれは体重計の故障と気づきそうなものだが、良くも悪くも天然な彼女はそれに気が付かなかった。そして、部屋に戻ってすぐに時価ネットをチェックし、ダイエット商品を注文した。その名も『ウエストすっきり低周波パット』である。ネットでの評判は悪くなかったのできっと大丈夫と信じ、公子はその電池入れの中にあるアイテムを電池と一緒に差し込んだ。それは物心ついたころから持っていた黄昏色の羽。影時間では普通の機械は動かなくなるが、いつだったかこの羽が付着している間は愛用のミュージックプレイヤーが稼働していたのを見て閃いたのだ。この羽がついていれば影時間でも機械が使えると。影時間内にのみ出現する化け物、シャドウを斃すことこそが彼女たちペルソナ使いの任務なのであるが、公子はそれすらもダイエットに利用することにしたのだ。ようは、ダイエット器具使いながら暴れたらもっと痩せるんじゃね?とおもったのだ。しかし、ダイエット中というのを仲間に知られるのも嫌だった彼女は一人寮を抜け出してタルタロスまでやってきたというわけである。後にこの閃きを後悔することになるとはまだ公子は知る由もなかった。

「流石に一人で上の方は危ないし、一階からかなー」

 どういう仕組かはわからないが一番先に進んだ階層までテレポートできる装置を無視し、公子は一直線に奥の巨大な扉へと向かった。そして、その扉を超えると同時に自らの腹部に取り付けた装置のスイッチを入れる。すると、機械の動作音とともに公子の腹部に妙な感覚が奔った。

「ひゃっ!? こ、これっっ……くすぐったっはははは!無理無理無理ぃ!」

 公子は腹部を襲った強烈なくすぐったさに負けてその場に倒れこんでしまい、すぐさま機械のダイヤルを強から弱へと切り替えた。それに伴って振動は弱まり、公子はなんとかよろめきながらも立ち上がることができた。

「くふっ、まだくすぐったいっけど、う、動けなくはないかなっ。ってか、腹筋鍛えるって、そういう意味でなんだ……」

 若干、自身の買い物が失敗だったと感じつつも、ここまできて断念するのも微妙な気がしてプランを続行することにする。そして、少し歩いたところで最初の笑い声につられてやってきたと思われる不定形タイプのシャドウが現れた。

「ふうっ、くふふ、来たね。まずは準備運動に一匹ぃ!」

 いつも愛用している薙刀をふり、一閃のもとにその本体である仮面をたたき切る。くすぐったさから普段よりは力が入っておらず、手も震えていたが流石にそこはレベル差もあって問題なく戦闘を終了した。

「ふふふ、楽勝っ!どんどん来なさい、脂肪もろともたたき切ってやるから!」

 普段の彼女ならこの笑みは余裕の笑みだったのだろうが、今回に限ってはくすぐったさにあまり余裕がなくてこぼれた笑い声であった。そんなことを知ってか知らずか、今度は先ほどのシャドウと同型のものが四方から同時に現れ、公子の方にわらわらと向かってきていた。

「数が多い時はこれしかないよねっ!」
 拳銃の形をした召喚機をこめかみにあて、意識を集中する。そして、眼前の敵を一掃するべく、彼女は自らの分身を呼んだ。

「ペルソにゃぁ!?」

 否、呼び損ねた。理由は簡単、彼女は四方からやってくる敵に気を取られ、自身の真上の天井に張り付いていたシャドウに気が付かなかったのだ。普段は他の仲間が索敵をしてくれるのでこんなことはないが、一人できている今日に限っては話が違った。そして、さらに運の悪いことにシャドウが上から襲い掛かってきたときにその手の部分が『お腹すっきり低周波パット』のダイヤル部分を掠め、強さが中に切り替わってしまったのだ。弱でなんとか我慢していた公子が中の強さに耐えられるはずもなく、そのくすぐったさに悶えることとなる。


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