思い出と、因果

Last-modified: 2021-10-05 (火) 12:51:31
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これは、僕が小学校2年生のとき。
姉の友達、ノゾミさんをくすぐった日の思い出だ。

当時の姉は、中学1年生。
そんな姉には、仲のいい同級生の女子がふたりいた。

ロングヘアのノゾミさんと、ミディアムヘアのマリさん。
ふたりとも、とてもかわいくてやさしいお姉さんたちだった。

姉とノゾミさん、マリさんが僕の家で遊ぶときは、よく混ぜてもらったものだ。
性別が違うにもかかわらず、とてもかわいがってもらった。
すごく、ありがたいことだと思っている。

……あれは、とある夏休みの日だ。

僕は姉に誘われ、ノゾミさん、マリさんと一緒にトランプをしていた。
ババ抜きで、3回負けたら罰ゲーム、というルールだった。

僕とノゾミさんとが交互に負け、2敗ずつで罰ゲームにリーチ。

でも、最後の勝負は僕が一番上がり。
ノゾミさんの手には、ジョーカーが残った。
罰ゲームは、ノゾミさんに決定だ。

「悔しい~」

と頭を抱えるノゾミさんに向かい、姉が宣言する。

「それじゃあ罰ゲームは、腋の下くすぐりの刑10秒ね!」

「えっ!?」

ノゾミさんの顔は、ギクッと引きつった。
そんなノゾミさんの腕に、姉とマリさんが両サイドから飛びつく。

「ちょ、ちょっと!?」

座っていたノゾミさんは反応できす、あっという間に姉とマリさんに、両脇を固められてしまった。

「は、離して!」

ノゾミさんは身をよじるけど、姉とマリさんの拘束は振りほどけない。

そんな光景を僕は、目をパチクリしながら見ていると。

「オッケー! くすぐっちゃっていいよ!」

姉は、僕をそそのかしてきた。

「え……でも、何かかわいそうだし……やめとこうかな」

妙な恥ずかしさと照れくささを覚え、僕は断った。
すると今度は、マリさんがニヤッと笑う。

「あー、断るんだー? それならかわりに、私がキミをくすぐってあげようかなー? 時間無制限で!」

「うっ!?」

マリさんの脅しに、僕をひるんだ。

僕は、くすぐられるのが大の苦手だ。
あのむずむずする、無理やり笑わされる感覚はとても耐えられない。

時間無制限くすぐりの恐怖に負けた僕は、仕方なくノゾミさんの後ろに回った。

「ごめん、ノゾミさん……10秒ですぐやめるから、ちょっとだけ我慢で」

僕は申し訳なく思いながら、ノゾミさんの腋の下に手を差し込む。
ノースリーブワンピースからむき出しになっている、きれいな腋の下に。
僕の指先が、ノゾミさんの腋の下に触れた瞬間だった。

「きゃっ……」

ノゾミさんの身体が、ピクン! とふるえた。

僕の心臓は、ドクン! と跳ねた。
……ドキドキした。

「そこ、弱いの……やめて……」

ノゾミさんは後ろを振り向きながら、切ない声色で僕に訴えてくる。

ドクンドクンドクンドクン!

僕の心臓は、激しい音を立てながら跳ね続ける。
なぜかは、わからない。
けど、すごくドキドキする……。

(……本当にくすぐっていいんだろうか?)

僕は迷った。

でも。
ここでノゾミさんをくすぐらないと、僕がそれ以上にくすぐられてしまう。
それだけは、とても耐えられそうになかった。

「ごめんなさい、ノゾミさん!」

保身に走る自分を情けなく思いながら、僕はノゾミさんの腋の下をくすぐった。
こちょこちょ、こちょこちょと、指を細かく動かしてくすぐる。

「ヒャーーー!」

ビクビクッ! と、ノゾミさんの身体が跳ねたかと思うと。

「ヒヒヒヒヒ! ヒャーーーーーハハハハ!」

背中を丸めたノゾミさんは、引きつったような声で大笑いをはじめた。

「ヒャヒャヒャヒャ! ヒャヒャヒャヒャヒャ!」

ノゾミさんの甲高い笑い声は、部屋中に響き渡る。

「やめて! いやぁん! くしゅぐったいよーーーー!」

たまにノゾミさんの笑いに、甘く、舌ったらずなモノが混じる。
まるでちっちゃな子供みたいに、『お姉さん』なノゾミさんは笑い転げていた。

「キャーーーーーーハハハハ! キャーーーー!」

笑い転げるノゾミさんの腋の下から、汗が染みだしていく。
僕の指に、ノゾミさんの腋汗が絡みつく。

「ヒャーーーーーー! ヒャーーーーーーー!」

ノゾミさんは天井に向かい、絶叫をはじめた。
僕に腋の下をくすぐられ、我慢できなくなっているノゾミさん。

「キャーハハハハハハ! ヒャーーハハハハハハ!」

……なぜかはわからないけど。
すごくドキドキした。

「はい、おしまーい!」

姉の声で、僕は我に返った。

あっという間の10秒間だった。
何だか、すごく名残惜しかった。
でも、これ以上続けていたら、ノゾミさんが死んでしまうかもしれない。

……何よりも。
僕がおかしくなってしまうかもしれない。

僕は、ノゾミさんの腋の下をくすぐるのをやめた。
ノゾミさんの腋汗で、僕の指先はねっとりと湿っている。
またもドクンと、僕の心臓が跳ねた。

「ヒィ……ヒィ……」

ノゾミさんは肩で息をしながら、ぐったりと横たわっている。

顔は真っ赤だ。
髪も乱れている。
よく見ると、ワンピースのスカートがめくれかかっていた。

……僕の心臓のドキドキは、いまだに止まらない。

(どうしてこんなに、ドキドキするんだろう……)

今まで感じたことがないような、鮮烈なドキドキ感。
理解不能な気持ちに、僕はただ、戸惑うことしかできなかった……。

……以上は、僕が小学校2年生のとき。
姉の友達、ノゾミさんをくすぐった日の思い出だ。

……今はもう。
この日からは、10年の月日が流れたけれど。
このときのノゾミさんの笑い転げる姿や声は、脳に焼き付いて離れない。

特にくすぐる前に、ノゾミさんが訴えたひとこと。

『そこ弱いの……やめて……』

の声色は、今でもはっきりと思い出せるほどだ。
この体験は間違いなく、僕の性癖形成に影響したと思う。

……それと、おそらく。
ノゾミさんの、性癖にも。

「……ん? 何ぼーっとしてるのかな?」

恋人の声で、僕は我に返った。
僕は頭をかきながら、恋人に答える。

「……初めてくすぐった日のことを、思い出してました」

くすぐりパートナーでもある、僕の大切な恋人。
今は僕の部屋で、ベッドに大の字で拘束されている女性。

……ノゾミさんに。

「もう、思い出さないでよぉ! あれ、ホントに恥ずかしかったんだからね!」

ノゾミさんはぷっと、ほっぺたを膨らませる。

「これからもっと、恥ずかしくしてあげますよ」

言いながら僕は、ノゾミさんの敏感な部分に、そっと指を落とした。
キャミソールからむき出しになった、白く美しく、やわらかなボディパーツ。
ノゾミさんの弱点、腋の下に。

「きゃっ……」

指が触れた瞬間、ノゾミさんの身体がピクン! とふるえた。

僕の心臓も、ドクン! と跳ねる。

……何回くすぐっても、ドキドキするけど。
今日は、特にドキドキする。

18歳になった僕に、ノゾミさんからのプレゼント。
記念すべき初めての、ノゾミさんとの拘束くすぐりプレイだから。

「そこ、弱いの……やめて……」

ノゾミさんは、潤んだ瞳を僕に向ける。
切ない声色の訴え。

……思い出と同じ、声色と訴えだった。

僕の興奮がはじけた。
すかさず僕は、ノゾミさんの腋の下をくすぐりはじめる。
こちょこちょ、こちょこちょと、細かく、激しく。

「ヒャーーー! やめてーーーー! ヒャーーーーーハハハハハハ!」

一瞬で、ノゾミさんが笑い出した。

大人のお姉さん的な艶っぽさと、子供みたいなあどけなさ。
その両方がミックスされたような、ノゾミさんの笑い顔。

たまらなく、かわいい。

「ヒーヒヒヒヒヒ! キャーーーーーハハハハ!」

「キャハハハ! も、もう10秒だよぉ! 10秒過ぎたからぁ!」

「10秒とか、子供のころの話じゃないですか。今のノゾミさんなら、まだまだがんばれますって」

「無理ぃぃ! いくつになっても我慢できないよぉ! ヒャヒャヒャヒャヒャヒャーーーー!」

不自由な身体をのたうち回らせ、ノゾミさんは笑い転げる。

「キャーーーーハハハハ! くちゅぐったいよーーー! ヒャハハハハハーーー!」

ノゾミさんの苦しそうな、けれども少しだけ楽しそうな悲鳴を、BGMにしながら。
僕はノゾミさんの腋の下を、やさしく、厳しく。
こちょこちょこちょ、こちょこちょこちょと、くすぐり続けるのだった。

【完】



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